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シザードアの車とは?特徴やガルウィングとの違いを解説

車好きの憧れといえば超高級スポーツカー、スーパーカーでしょう。
性能やスタイリングなど、どれを取っても一般車種とは異なります。
ドアの開閉方法もそのひとつ。
シザードアを始め、いろいろな種類のドアについて解説しましょう。

縦開きのドアは実用性重視の結果

普通の車種のドアは横開きが一般的。
スーパーカーのドア、その多くは縦に開きます。
これだけでも差異化が図られており、オリジナル性があってカッコ良さ抜群。

でも、スーパーカーのドアが縦に開くのはデザイン性だけではないのです。
スーパーカーのシルエットといえば広い車幅と低い車高。
ストレートもコーナーも、とにかく速く走るためのデザインですね。

当然、ドライビングポジションは低く、背もたれは後方に傾斜しています。
この状態で乗降をスムーズにするためにはドア面積を広くしなければなりません。
横開きにすると左右に広いスペースが必要になるため、縦方向の開閉が多くなりました。

また縦開きの方が乗降の際にヘッドクリアランスを大きく取れることも理由のひとつ。
車種によっては横開きよりボディ剛性を強くできるケースもあります。

同じスーパーカーでもポルシェ911シリーズやGT-Rはドアが横開きですね。
これは元々の車種が居住性を重視した設計になっているからです。

300SLが世界初のガルウイング車

縦に開くドア、誰もが思い浮かべるのはガルウイング。
正面から見た時、Gull(ガル:かもめ)が羽を広げたような格好になることから命名されました。

一般的な横開きドアはヒンジがフェンダーについています。
ガルウイングの場合はルーフ。
したがってドアは、ほぼ垂直に開きます。

これを最初に採用したのは1954年発売のメルセデス・ベンツ300SL。
元来、レース用に開発された車で、シャシーには小径鋼管のフレームが使われています。
フレームは座席横を貫通しているので横開きドアでは乗降が困難。
そのため、ドアを垂直に開閉する方法が生まれました。

現在のメルセデス・ベンツ、実用性の高い高級セダンばかりではありません。
スーパーカーも必ずラインアップに設定しています。

なかでも印象に強く残っているのが2009〜2014年まで販売されたSLS AMG。
ロングノーズ、ショートデッキのシルエットで6.2LのV型8気筒を搭載。
最高出力はなんと571PS。
そしてドアはガルウイングタイプ。
モノコック構造になってもガルウイングを採用したのは300SLへのリスペクトでしょう。

シザードアの特徴はヒンジ位置と開閉方向

スーパーカーは巨大自動車メーカーだけが作っているわけではありません。
むしろ、スーパーカーしか作らないメーカーの方が多いのです。

その代表格がランボルギーニ。
初期のミウラやカウンタックのデザインは同社のネームバリューを一気に高めました。
1999年にアウディ傘下となってからも革新的な車を作り続けています。

たとえば創立50周年を記念して作られたヴェネーノ。
攻撃的なエクステリアを持ち、最高出力750hpを発揮するモンスターマシンです。
ドアは縦開きですが、ヒンジが突いているのはフェンダー部分。

またドアにはリアフェンダーの一部も含まれており、跳ね上がった形状はまるでハサミ。
ドア開閉の動きもハサミに似ていることから、シザー(Scissor)ドアの名前がついています。
もちろん、シザーとはハサミのこと。
ランボルギーニはフェンダーヒンジの縦開きドアを他の車種にも採用しています。

これらの例から、シザードアはランボルギーニの特徴のひとつになっています。
ガルウイングドアとの違いはヒンジ位置と跳ね上がり方。
一見、同じように見えても構造には大きな違いがあるのです。

ちなみに縦開きのドア形式は他にもあります。
斜め上方に開くのはバタフライドア。
蝶が羽を広げた姿に似ていることがネーミングの理由です。
BMWのi8やラ・フェラーリなど多くのスーパーカーが採用しています。

アストン・マーチンが特許を取得したのはスワンウィングドア。
やや斜め上方に開く形式で、文字通り白鳥のような優雅な姿になります。

今後、ボディは鋼板から複合カーボンなどいろいろな材質に変わることが予想されます。
そうなればドアの形状や形式も比較的自由にデザインが可能。
すでにコンセプトカーではジェット戦闘機のようなキャノピードアも登場しています。
近未来の自動車、形が大きく変わることは確実ですね。

かつては日本車も縦開きのドアを採用

縦開きのドア、スーパーカーだけとは限りません。
かつては日本車にも採用されたことがあります。
それも軽自動車に。
1992〜1995年に販売されたマツダのAZ-1ですね。
ミッドシップ形式でステアリングのロックtoロックが2.2回転という本格的なスポーツカーでした。

バタフライドアを採用したのはトヨタのセラ。
1990〜1996年の間、販売されました。
こちらはスポーツカーというよりスタイリッシュなデザインを優先して開発されています。
コクピット部分の大半がガラスで構成されていることが最大の特徴。

どちらの車種も現在は中古車市場にほとんど出回っていません。
縦開きのドアに乗りたい!という人はやはり輸入車に頼るしかありませんね。

ただし、縦開きドアの車種は開閉形状に限らず構造が複雑です。
故障すると修理には専門的な知識が必要。
たとえ中古車であっても故障の際の修理は日本代理店に相談しましょう。

なお、並行輸入車は対応不可となる場合があります。
購入の際も日本代理店などプロに相談した方が賢明です。